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意地を見せた今季最終戦、昇格をかけた滋賀を相手にドロー

2023年11月27日 

 

2023シーズンを締めくくるJFL最終節はホーム・ラピスタに昇格入れ替え戦進出をかけた2位・レイラック滋賀を迎えて行われた。選手たちの今シーズン最後の有志を見届けようと、この日のラピスタは試合前から多くの人で賑わい、優勝・昇格争いからは脱落してしまったもののスタジアムには2,120人の観客が集まり、今季3番目に多い観客数となった。

試合は昇格入れ替え戦進出を目指し気合いみなぎる滋賀が立ち上がりから強烈な圧力を持ってヴィアティン三重を押し込み15分までに2得点を上げる。そのまま相手の勢いにのまれたまま試合が進むかと思われたが前半のうちにエース・田村翔太のゴールで一矢報いる。前半は危ない場面が多かったが立て直して風上に立った後半は優位に試合を進める。そして迎えた85分、相手ゴール前で大竹将吾が倒されてPK獲得、それを大竹が冷静に沈めて同点。その後も追加点のチャンスはあったが勝ち越すことはできずに試合終了。

今季最後の試合は惜しくもドローでの結末となったが、目の前での相手の昇格入れ替え戦進出を阻んだ。最後まで諦めない姿勢を見せた選手たちに歓びの表情はなかったものの、苦しい状況から流れを変えて追いついたこと、そして長いシーズンを闘い抜いた安堵感が見て取れた。これでヴィアティン三重の2023シーズンの闘いが終わった。

 

 

第25回 JFL第30節・試合結果

ヴィアティン三重 2-2 レイラック滋賀
(1-2/1-0)

  • 5分:②平井駿助・レイラック滋賀
  • 15分:㉖角田 駿・レイラック滋賀
  • 29分:⑩田村翔太・ヴィアティン三重
  • 85分:⑨大竹将吾・ヴィアティン三重(PK)

 

 

前半・早い時間に2失点、しかし田村のゴールで踏みとどまる

 

雲ひとつない青空が広がる東員町の空。3月に開幕した今シーズンのJFLはこの日が最終節、泣いても笑ってもこのメンバーでプレーするのは最後となる。前節はアウェー沖縄で悔しい敗戦。そして前節からはスタメンを二人入れ替えて臨む。西からの風が少し吹く中、風上に立つ滋賀ボールでキックオフ。

前半4分、ハーフウェーライン付近で相手のフリーキック。キッカーは正確なキックを武器とする㊿平尾選手。ふわっとゴール前に放り込んだボールはエンドライン付近でヴィアティン三重の選手がクリアしコーナーキックを与える。キッカーは㊿平尾選手。180㎝超えの長身選手がゴール付近を固めそこに正確なキックを入れる。ニアですらしたボールをファーサイドで頭で決められ、早々に失点。警戒していたセットプレーで簡単に失点し苦しいスタート。

 

 

気を取り直してリスタート。右サイドからボールを運び相手陣地に攻め入る。それに対して攻守の切り替えが速い滋賀、ゴール前を固めて簡単にはクロスを入れさせない。9分、コーナーキック獲得。今節はスタメンに復帰した安西海斗が蹴る。ゴール前でエフライン・リンタロウが頭ひとつ抜け出し、ドンピシャのタイミングであわせたがここは相手GKのナイスセーブ。完全に枠に飛んでいたがゴールならず。

 

 

 

その後も滋賀の厳しいプレッシャーに手こずるヴィアティン三重、最終ラインからのビルドアップもスムーズに運べず横パスで回避するのが精一杯。昇格入れ替え戦への強い気持ちをみなぎらせる滋賀、先制点を獲ったことも後押しして序盤から圧倒的なプレッシャーでヴィアティン三重の自由を奪う。そして15分、最終ラインからひとつ前に入れたところを狙われてショートカウンターを受ける。スピードに乗る滋賀FW陣、ゴール前中央で至近距離からシュートを打たれるがGKモリケンがセーブ、しかしこぼれ球を押し込まれて失点。相手の勢いに完全に押し込まれ15分で2失点と今シーズンワーストとも言えるスタートとなる。

 

 

ヴィアティン三重のスリーバックが相手FW3枚の執拗なプレッシャーを受け思うように前にボールを入れられない。少しずつ選手間の距離が悪くなり、パスもほとんど通らない。苦しい体勢で相手のボールを奪いにかかりファール、繰り返しフリーキックを与えてしまう。17分、20分のFK、23分の連続CKとセットプレーから何度もゴールを脅かされる。立て続けにやってくるピンチをGKモリケンを中心に身体を張ってなんとか跳ね返す。

 

 

その直後、菅野のドリブル、エフラインのポストプレーで相手陣内にボールを運び少しずつ相手を揺さぶりにかかる。しかし守備陣の戻りが速く簡単に決定機までは至らない。そして27分、ピッチ中央付近でボールを受けた安西が顔を上げて前方を確認、呼応するように動き出すエフライン、そのエフラインに安西からのボールが収まり後から上がってくる菅野に預ける。それに相手DFが引っ張られたのを見計らって裏に抜ける田村翔太。そこへ菅野がワンタッチでスルーパスを送る。相手GKが飛び出して来るがかわしながら田村がアウトサイドで浮かせてゴールに流し込み1点返す。田村は今シーズン8点目。

 

 

 

1点を返したものの勢いが衰えない滋賀、長いボールとスペースを狙ったランニングで一気にヴィアティン三重ゴールに迫る。32分にはまたも精度の高いコーナーキックであわや直接ゴールかという場面を迎えるがモリケンが腕を伸ばしてクリア。ゴール前に密集を作られ動きを制限させられるがギリギリのところでゴールを割らせない。田村のゴールで1点は返したものの滋賀の勢いを受けてしまい、思うようにボールを運べないヴィアティン三重。その後もなんとか滋賀の攻撃を凌いで前半を1-2で終える。ヴィアティン三重のシュートはわずかに2本、一方滋賀は9本。

 

 

後半・大竹のPKで追いつき最後まで相手ゴールに迫ったが勝ちきれず

 

後半の入りも滋賀が前半同様に厳しいプレシャーと前への推進力を持って試合を進める。ヴィアティン三重は前半に比べてやや距離感が良くなったが、とにかく相手のプレッシャーが厳しくパスの出しどころがない。中央を固める滋賀の選手たち、ゆっくりとボールを回しながらスペースを探すヴィアティン三重の選手たち。

55分、ヴィアティン三重のコーナーキック。右コーナーから安西が蹴ったボールは相手選手が頭ですらしたがファーサイドにポジションをとっていた野垣内の元へ。胸トラップして落とし右足を振る野垣内。相手GKの目の前でDFがクリアするがそのボールがゴール前にいた田村の方へ転がりそれを田村が押し込みネットを揺らす。しかしこれはオフサイドの判定。惜しくもゴールとはならなかったが、少しずつ自分たちのペースを掴んで相手ゴールを目指すヴィアティン三重。

 

 

63分、⑤菅野に代えて⑨大竹、⑳金に代えて㉕藤澤が入る。前線にエフラインと大竹が入りターゲットが2枚になったヴィアティン三重、ロングボールを入れて相手陣地に攻め入る。65分、自陣ゴール前でボールを受けた安西、前方のスペースへ走る大竹を狙った長いボールを入れる。相手DFとトップスピードで競りながら必死に走る大竹、なんとか収めたいところだったが相手DFがわずかに先に触ってクリア。しかし投入されてすぐに相手の脅威になるプレーで流れを呼び込む。

 

 

69分にはまたも安西から左のスペースを狙った正確なパスが入り田村が全力で走り相手のファールを誘う。そしてフリーキック獲得。安西が良いボールを入れるが高さのある相手DFに弾き返される。残り時間が少なくなり、追加点が欲しいヴィアティン三重が前への推進力を高め相手ゴールに迫る。一方、リードを守りたい滋賀は身体を張った固い守備でチャンスを作らせまいと身体を投げ出す。

 

 

試合時間は80分を経過、繰り返し前線にボールを入れるヴィアティン三重、大きく弾き返す滋賀、流れはヴィアティン三重にある。83分、ピッチ中央付近でボールを受けた安西、相手ゴール前の密集を目掛けてボールを入れる、跳ね返す滋賀DF陣、そのセカンドボールを拾った池田直樹、ドリブルで右に運んで相手選手二人を振り切り中へ折り返す。ゴール前ニアに大竹、中央にエフライン、ファーサイドに田村。そしてニアの大竹にパスが通りトラップしてシュートモーションに入ったところで倒れていた相手選手の脚が入り大竹が宙に舞う。そこでペナルティースポットを指す主審の笛が鳴り響く。ヴィアティン三重ゴール裏から大きな歓声が上がる。

 

 

自ら得たPKでボールを受け取る大竹将吾、緊張する場面に臨む後輩に「任せたぞ」と肩に手を置く田村翔太。入団2年目、23歳の若きストライカーとはいえ、その勝負強さにエース田村も絶大な信頼を寄せる。ボールを置き長い脚でゆっくりと一歩二歩と助走を取る大竹、9歩下がったところで腰に手を当てて大きく息をつく。視線をゴールにやり小刻みに踏み出し右足を振り抜いた。迷わず右方向に速いボールを蹴り込み、相手GKも同じ方向に跳んだが届かずゴールネットに突き刺さった。ゴール裏からは怒号にも似た歓声が上がる。両手を広げて煽る大竹、そして残り時間の勝負に向けてポジションに走って戻る。

 

 

 

85分、⑱エフラインに代えて㉟寺尾、⑦森主に代えて⑮梁を投入、勝ち切るために追加点を狙いに行く。勢いはヴィアティン三重にある。88分には交代で入った寺尾と梁が右サイドからチャンスを作りゴール前でパスを受けた梁がシュート!しかし相手GKがスーパーセーブ。跳ね返りを再び梁が押し込むがカバーに入った相手DFがクリア、さらにはそのセカンドボールを藤澤が強烈なミドルシュート、しかし相手選手が身体を投げ出してブロック、惜しくもゴールとはならなかった。

 

 

ホーム最終戦をなんとしても勝利で終わりたいヴィアティン三重、そして昇格入れ替え戦の権利をつかみ取りたいレイラック滋賀、文字通り死力を尽くして闘う両チームの選手たち。そしてヴィアティン三重は⑰野垣内に代えて90+2分にキャプテンの②谷奥を前線に入れ最後のパワープレーを狙う。その直後、滋賀が最後の猛攻。繰り返し至近距離からのシュートを浴びるが古巣相手に絶対に負けられないGK森建太、研ぎ澄まされた集中力を発揮して全てのシュートを跳ね返しピンチを凌ぐ。さらに畳み掛ける滋賀、最後にヴィアティン三重陣内・エリアの外でフリーキックを獲得。ラストプレーにはGKも上がってきて壁に入る。絶対に守りたいヴィアティン三重は大竹だけを前に残して全員が戻って守備につく。滋賀のキッカーは再三苦しめられた㊿平尾選手。低い弾道で蹴られたボールは壁に当たり跳ね返る、そして試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

最終的にFCマルヤス岡崎に勝利したブリオベッカ浦安が2位となり、ヴィアティン三重と引き分けたレイラック滋賀は3位、昇格入れ替え戦への進出は果たせなかった。2点のリードを許しながらも最後まで諦めずに闘い抜いた結果、対戦相手の歓喜の瞬間を阻み、2023シーズンの最終順位は10位で終えることとなった。

 

 

レイラック滋賀の圧力は圧倒的だった。それは試合が始まる前から我々を威圧していた。水色に染まったアウェーサポーター席、そして50人近い選手を抱えるチームにはベンチ外選手が30人近くおり、ロッカーアウトでピッチへ向かうチームメイトを送り出す際に長い花道を作り、大きな声をかけてパワーを託していた。その光景と熱量は圧倒的で、昇格入れ替え戦に必ず行くんだという強い思いがチームから伝わり、相手の闘争心を飲み込むのに十分なものだった。

 

 

試合が始まり前半の立ち上がりは完全にその圧力を受けて立ってしまった。滋賀はセットプレーからのゴールが多い(全ゴールの約60%がセットプレーからによる)と分かっていながら開始早々の5分にセットプレーから失点。相手の圧力に飲まれる形で15分にも失点。その後もコーナーキックから再三ゴールを脅かされ、ギリギリ紙一重のところで跳ね返し続ける様を見て、ここから何点獲られるのだろうか…、そんな気持ちにさせられる展開だった。

 

 

しかし誰よりも強い気持ちを持ち続けた男が流れを変えた。この日は谷奥に変わってキャプテンマークを巻いた副キャプテンの田村翔太。29分に素晴らしい連携から裏に抜け出し1点を返す。決めた時には笑みを全く見せることなく、自らが決めたボールを拾いに走り、振り返ってセンターサークルまで走って戻る。「このままじゃ絶対に終わらせない」今シーズン、チームの勝敗を背負ってきた田村のゴールがチームに火を点けた。

後半には決定機が何度かあったが相手も簡単にはやらせてくれない。この一戦にかける想いは入れ替え戦を目指す滋賀の方が上だったかもしれない。しかしそんな滋賀の固い守備を三重の若武者がこじ開けた。今シーズン、その勝負強さで何度もチームに勢いをつけ、何度も窮地を救ってきた男・大竹将吾。先日の三重ダービーに続き、まさに値千金のゴールでドローに持ち込んだ。

 

 

振り返れば上手くいかないこと、悔しいことの方が多かったシーズンだった。もう何年もそんなシーズンが続いている。しかし、甘いと言われるかもしれないが、優勝がなくなっても、昇格の可能性が消えていても、どんな状況であってもあのゴールが決まった瞬間の湧き上がる興奮はたまらない。もちろん勝利の歓びは何者にも代えがたい。意味のないゴールはひとつもない、意味のないパスもひとつもない。この日のゴールを、今シーズンたくさん繋いできたパスを、来年のチームに繋げていこう。

 

 

「Never Stop Challenging.」挑戦することをやめなければ、そのパスは繋がり続け、きっと最高のゴールに結びつくはずだ。今シーズンを闘い切ったいまは、勇敢に闘ってくれた僕たちの選手たちに、そして共に闘ったサポーター、スタッフ、対戦相手、そしてヴィアティン三重に関わってくれた全ての人に感謝の気持ちとエールを贈りたい。また、今シーズン限りで引退する④寺田匡史選手、退団が発表されている選手たちの未来が明るいものになりますよう、心から願っています。

また来シーズンもスタジアムで会いましょう!

 

 

 

運営サポートは津田学園高校・鈴鹿高校のみなさん!

今シーズンのホーム最終戦・JFL最終節の運営サポートは津田学園高校サッカー部、鈴鹿高校サッカー部のみなさんでした。元気いっぱいなみなさんのお陰で今シーズン最後の試合を円滑に運営することができました、ありがとうございました!

 

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※公開終了日:2023/12/31
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