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インタビュー:和波スポーツダイレクター・後編

2023年01月13日 

 

ヴィアティンマニア・インタビュー《和波スポーツダイレクター前編》に続いて後編をお届け。後編ではJ3昇格という目標を果たせなかった2022シーズンの闘いについて話してもらった。昨シーズンの初めに樋口監督が掲げた「主体的で躍動感溢れる、エキサイティングなサッカー」そのスタイルにも触れつつ、選手に近い立ち位置から見た課題や気持ちの変化など、ここだけで語るヴィアティン三重の「深いところ」をまとめた。

 

2022シーズンの闘い、足らなかったものは何か?

 

VTM:昨シーズンの成績に関して。結果としてJ3昇格を果たせなかったわけですが、細かなところを聞き始めるとキリがないので全体的に、シーズンを通して「何が足らなかったのか?」そういうところを聞きたいと思います。前期・後期は区切ってもらってOKです。

和波SD:前期に関しては監督も言っていたように、やっているサッカーは良くないけれどもチームとしては勝てていて良い雰囲気を作っていた。良い流れを作ることができていた。開幕前にけが人が何人かいて当初考えていたメンバー構成ではなかったけれども、勝ってスタートすることができた。そして徐々にけが人が戻ってきて前期の流れを作ったていましたね。

 

VTM:シーズン序盤を振り返ると、6/5の三重ダービーまではやっている内容が良くないとしてもチームとしては良い流れを作れていた。そして次のMIOびわこ滋賀戦、アウェーで1-2で敗れたあの試合から少しずつリズムが悪くなってきた印象があります。シーズンを通して振り返ると何か流れを悪くしてしまったポイントとなる試合、場面はありますか?

和波SD:あの時のMIOびわこ滋賀との試合。あの時も試合に入るまでの一週間はとても良かったんです。本当に良いトレーニングができていたにも関わらず、どうしてこうなってしまったのか?という感じはありました。それは監督もですし選手たちもそうでした。MIOの試合もそうですし、夏場の三連敗(大阪・しまね・鈴鹿)も同様でした。監督の中にも大きなクエッションが生まれた。それは試合中だけのことではなくて、それまで一週間素晴らしいトレーニングをできてきたのになぜだろう?と。三連敗の試合、そのあとも下位のチームに負けてしまった試合がそうでした。

これは私の考えですが、前期は目指すサッカーの完成度は高くなくても勝つことができていたところから、中盤戦を経て「勝たなければいけない」という考えが知らないうちに選手たちの中には生まれていたんじゃないかと。樋口監督も言っていましたが「この段階で(そういう緊張感)出るのか…(苦笑)。残り数試合、そこで昇格争いをしているならわかるけれど、シーズン半分を過ぎたところで出るとは…。」と。

例えば19節、ホームでのしまね戦は考えられないような悪い内容で負けてしまった。考えられないような選手の動きの悪さ。ホームで大きな期待がかかって、観客2,000人動員して、サポーターのみなさんの応援があって、俺達が昇格させなきゃいけない!そういうものが良い方向に働くと思っていたことが、早い段階から選手たちにはプレッシャーを大きくする方向に働いてしまっていたように感じるところもあります。上位につけていて、ホームに下位のしまねを迎え、前節は上位の大阪には負けたけれどもこの試合は絶対に負けられない、それが動きの悪さや内容の悪さになっていた。そう考えると19節のしまね戦はそのきっかけになってしまったのかもしれません。

 

 

VTM:負けた試合の監督会見で樋口監督が「理解できない…。」と言われたことが数試合ありました。それはきっと精神的な部分なんだろうと思っていました。その部分は外からアプローチするのが難しいところなので、昨シーズンの経験を踏まえて今季はどのように対処するのかが気になるところです。

和波SD:そうですね、私もそう感じています。樋口監督がJFLのシーズン中盤でのプレッシャーを軽く考えているとは思いませんが、監督はいろんな経験をされているので、シーズン終盤で優勝・昇格がかかってきたらどんなプレッシャーになるのか比べ物にならないぞと。その痺れるようなプレッシャーは逆に楽しみだと選手たちは思って欲しいぐらいでしょうから。昇格を決めた奈良クラブやFC大阪は何年もかけてそういうプレッシャーを乗り越えたわけですしね。もちろん奈良や大阪は素晴らしいサッカーをしていましたが、ずば抜けていたというより、苦しい試合でも競った試合でもやっぱり勝つ。なぜか勝つ。なぜってことは無いとは思いますが勝負強かった。そういうところまで選手たちのメンタルやクオリティをもっていくことができたから昇格できたと思うんです。

例えば僕がJ2への降格争いを経験したときのような「もうあとがない!」というプレッシャーではなく、JFLからJ3は上がるだけ(新レギュレーション発表前の言葉)なので、勝つぞ、上がるぞ!という気持ちでやるだけだと思っていますが、彼らにとってはいろんな重みを感じながらプレーしていると思うので、そこはさらに成長してほしいところです。そしてこの経験はクラブとしての積み上げができたシーズンとして次に繋げていきたいですね。

 

VTM:メンタル面を強くするために、クラブとしては何か手を打つのでしょうか?

和波SD:たとえばメンタルトレーニングを取り入れるとか、簡単に浮かぶようなことはありますが、これは試合でしか経験できない、試合でしか強くなれない部分だと思いますし、個々の選手が強くならなければならない。他にクラブができることとしては強いメンタリティを持った選手を獲得すること。そうやって強くなっていけたらと思います。

 

 

VTM:昨シーズンのメンバーでは誰が精神的なところで強さを見せていましたか?

和波SD:タムショー、(川中)ケンタ、彼らは危機感を持ちながら強い気持ちを見せていましたね。「オレたちはこんなもんじゃないぞ、もっと上に行くんだぞ」という想いをもってやってくれているのが伝わってきました。健四郎は怪我はあったけれどもシーズンを通し、リーダーシップを持ってチームを引っ張ってくれました。他にあげると、麗司も良さは発揮してくれていましたが、彼の持ち味である守備だけではチームに貢献できないということがわかったと思います。樋口監督の要求は高いので攻撃でも良さを出していかなければいけない。麗司に限らず選手たちは日々要求に応えて結果に繋げていかなければならないので、プレー面での質を高めて、自分自身で精神的な強さに繋げていって欲しい、そう思います。

そういえばテツ(菅野選手)は一時期プレーの質が少し落ちたことがありました。失点に絡むシーンがあったりして精神的にも少しキツそうなことがあって、その時に話をしました。「チーム全体のことを考えるのはテツに求めていないよ、90分の中でテツのプレーをどれだけできるか?それをやってくれたら周りは信頼してボールが集まってくるし、それがチームの勢いや一体感に繋がるんだよ。全体をまとめるのは他にその役割を負ってくれる選手がいるから問題ないよ。」そう話しました。その時は彼がチーム全体のことまで背負って考えすぎていた感じがあったのでそんな話をしたこともありました。その時は彼自身もそういうところがあったと感じていたようでした。そのあとは少し整理できて、感覚的なところが良くなってきたようです。

個々の選手たちはそれぞれに良いものをもっていて、選手達の個性や良さをまとめるのは樋口監督の仕事なので、選手達は自分の個性や特徴をどんどん出してくれたら良いと思っています。

 

VTM:長くヴィアティン三重を見てきましたが、個々の選手のポテンシャルはヴィアティン史上ナンバーワンだと思います。それだけに期待は大きくなりますよね。

和波SD:本当に良い選手たちが揃っていると思いますし、それぞれに良いものを持っていて、その出し方さえ間違えなければもっともっと良くなるチームだと思っています。

 

チームのスタイルについて

 

VTM:次はチームのスタイルについてお聞きします。今季のスタイルについては後日樋口監督にお聞きしようと思いますが、昨シーズンのスタイルに関して1シーズンやってきてコーチとして感じること、成果などあれば聞かせてください。

和波SD:サッカーのスタイルとしてはブレずにやってきたと思います。守備に回らなければならない時間帯、自分たちがリズムを作れている時間帯、さらには我慢できた試合、我慢できなかった試合、いろんな試合がありました。ボールを握るといいながらも、ボールを握れなかった時のゲームをどのように進めていくのか、それが課題だと思います。ボールを握ったけど勝ちきれなかったり、ミスから失点をする場面が多かったり…ここぞという守らなければいけない場面で、キーパーも含めてピッチにいる選手たちで感じて対応できるようにしなければならない。結局プレーするのは選手たちなので。勝てているチームとそうでないチームの差はそこに出てくるように感じています。

 

VTM:昨シーズンのJFLの中では、ヴィアティン三重のやりたいサッカーのスタイル(ボールを保持して繋ぐスタイル)は特に明確だったように思います。そういう意味でスタイルが明確な分、相手に対策されやすいなと感じるところはありましたか?

和波SD:このように動きなさい、という事をあまり作らないのが樋口監督です。この展開になるとこの選手が動き出して、この選手に預ける、そういうのは分析するとわかりやすくはなってくると思います。結局はそこをどう超えていくのか。常に相手の対策の上を行かなければならない。そうでないとサッカーが進化していかないと思います。相手がどこであれ、どんなサッカー、対策をしてきても二手、三手と相手を超えるプレーができる。スタイルを作りながらもそれをやらないと結果はでないので、やはり来季は結果というところに拘るゲームをしたいですね。

 

 

VTM:昨シーズンの最終戦を終えた樋口監督に「1シーズン闘って、JFLはどんなリーグでしたか?」と尋ねました。その時のインタビュー記事には書きませんでしたが、樋口監督は「カオス(混沌)」だと言われました。それはチームごとに目的が違っていて、サッカーのスタイルも違う、各チームの目的がはっきりしているJリーグとJFLを比較して表現した一言がそれだったのだと思います。

和波SD:それがJFLなんですよね。昇格を目指しているチームだけじゃありませんし、みんな目的が違うわけですから。でもそういう相手に一喜一憂しないことが必要なんだと思います。相手がどうであれ自分たちの目標は明確なわけですし。

 

VTM:Honda FCはある意味そういう感じかもしれませんね。Jリーグは目指していないけれども、JFLでの優勝を目指し、自分たちのサッカーをひたむきに追求している。そんな気がします。

和波SD:そうでしょうね。そうやって追求しながら天皇杯ではJ2が相手でも遜色なくやれるぐらいまでもっていけるわけですから。でも我々としてはそこに勝って昇格したい、Honda FCが相手だとしても上回るんだと、そこを見ています。Honda FCに勝つことができて初めて、上のカテゴリーに行ってもやれるチームになると考えています。Honda FCに勝ち、他にも昇格を目指すチームに勝ち、また別の目的をもったチームに勝つためにはこれまで以上のタフさが必要だと、樋口監督も感じているんじゃないかと思います。

 

最後に

 

VTM:和波SDはシーズン中はコーチとして選手と接し、シーズンが終わるとスポーツダイレクターとして選手に接する。大変な役目ですね。

和波SD:僕たちが県リーグからスタートした頃と比べ、JFLまできて、さらにはJリーグ昇格を目指すところまでくると、選手との接し方もよりシビアなものになります。そして選手は何年もトップレベルでやれるものではないので、この1年この1年にかけていると思います。シーズンが終われば私は選手からするとある意味憎まれる立場になるわけですが、自分の役目は分かっていますし選手に好かれることが仕事ではないので、プロクラブを目指すヴィアティン三重の仕事として選手と接しています。

私も選手時代には経験してきましたし、たとえシーズンを通してフル出場していても翌年には満了を言い渡されることがある世界です。それは仕方の無いことなんだと。樋口監督と選手の契約のことについて話をしますが、樋口監督がヴィアティン三重に来てくれたことで、クラブはよりプロクラブとしての厳しさを学び、成長していこうとしています。契約満了になった選手の想いも背負ってチームが活躍・成長することで納得させなければならない。逆に満了になった選手は私やクラブのことを憎らしく思っても、ヴィアティン三重を見返すぐらいの活躍をするべく頑張ってくれたら、それが選手にとっての力になる、そう樋口監督からもよく言われています。

いろんな試合会場に行くといろんな選手が樋口監督のところに挨拶に来ます。「樋口さん!」「おう頑張ってるな!」これまでに育成年代から日本代表選手まで多くの選手と関わってこられた樋口監督の言葉の重みを感じながら、スポーツダイレクターの仕事に取り組んでいます。

 

 

VTM:では最後に応援してくれるみなさんにメッセージをお願いします。

和波SD:昨シーズンは本当に感謝しかありません。そして昇格を果たせなかったことは申し訳なく思っています。チームとしては着実に成長していますし今シーズンに昇格を実現するためのベースは選手たちがしっかりと作ってきてくれたと思います。その選手たちが継続して頑張ってくれますので大いに期待して欲しいです。そしてシーズンの最後に目標を達成してその瞬間をみんなで喜びあえることを楽しみにしています。クラブに関わってくださるいろんな人達の努力が報われるシーズンにしたいと思います。