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激闘のホーム最終戦、FC大阪に劇的ドロー

2021年11月22日 

 

「やっぱり、さすが坂井さんや!」

1点ビハインドで迎えた88分、⑧澤が前線の⑥坂井に送ったボールは少し長くなった、しかしエリアギリギリの難しいところ、相手GKが前に出て弾き返そうとしたがミス。ボールは諦めずに走り込んでいた⑥坂井将吾の前に転がった。ゴール右側の深いところに転がり角度のないところから坂井が見事に流し込み同点ゴール。

「やっぱり、さすが坂井さんや!」ゴール横でボールパーソンを務めていたヴィアティン三重U-15の選手が思わず声に出した。その瞬間を観ていた全員が同じ気持ちだっただろう。下部組織でコーチを務める坂井将吾。最後まで諦めない気持ちでサッカーの面白さをサポーターだけでなく、試合運営を支えてくれる教え子たちにも届けた。

J3昇格の可能性を残していたFC大阪との激闘は、どちらも一歩も譲らない好ゲームとなった。勝点3は手にできなかったが、最後までアツい闘いを繰り広げた両チームに対してスタンドから温かい拍手が送られ、アサスタに詰めかけた1,494人のファン・サポーターは結果以上に満足げな表情を見せていた。そして素晴らしい雰囲気に包まれた2021年のホーム最終戦が終わった。

※各セレモニー、フォトギャラリーは別記事として明日公開予定です。

 

△ ヴィアティン三重 1-1 FC大阪 △
(前半 0-1・後半 1-0)

  • 25分:⑯町田蘭次郎・FC大阪
  • 88分:⑥坂井将吾:ヴィアティン三重

 

第23回 JFL第32節・スターティングメンバー

 

試合終了後・山本監督コメント

 

山本監督・試合総括:FC大阪さんはまだ昇格の可能性がありましたので、彼らは最初から飛ばして勝ちに来るだろうと想定していました。従って前半をゼロで終わらせることができれば心理的により攻撃的になるので、そこでカウンターから得点を狙うゲームプランで臨みました。注意していたところは外から簡単に中に放り込んでくるやり方と、ゴール前でのこぼれ球に対して16番の左足がパンチ力があるのでそこに注意しようと準備していましたがやられてしまいました。バウンドが少しアンラッキーなところはありましたが、あそこで寄せ切れるかどうか、あそこで気配を感じてポジションを取れるかどうか、そこが失点の原因になったと思います。

しかし内容を見てみると、相手のプレッシャーに対してひるむことなくボールを受けて食いつかせて、またそこをはがすということができている中での1回のプレーで失点しました。ハーフタイムに言いました、何も変えることはない、やるべきことはできているだろう?あとはゴールに流し込むだけだと。後半から入った⑧澤がボールを持つと縦にも横にも相手の予測できないところへパスを出せる能力がありますので、そこから変化を付けながら攻撃していこうと話しました。終盤に⑥坂井が相手のミスを突いて同点ゴールを決めたところについては「チーム一丸となって集大成を見せよう」と試合前のミーティングでの言葉に応えてくれたと感じています。

今日の試合に限らず、内容が良くなくても最後まで諦めずにやり続ける、そういう強い気持ちはチームに浸透していると感じました。欲を言えば、これだけ多くの来場者があったなかで勝点3を上げて笑顔でお帰りいただければよかったのですが、勝負の世界ですので結果は仕方ないとして、やるべきことはやってくれたと思います。

 

インタビュアー:あと1試合残ってはいますが、今シーズンを振り返るとどんなシーズンだったでしょうか?

山本監督:スタートで躓いて、残り20試合のところで監督代行になり、8月に監督として指揮を執ることになりました。ざっくりとした言い方になりますが、拮抗したゲームに勝ちきれなかった、これについてはまさに私の指導力不足のところが大きいと言えます。一方、これはもう負けたな…という試合、ATに得点して引き分けた試合は、選手たちが自立して「やるんだ!」という意識と強いメンタリティーが備わった証だと思います。総じて言うと、決めるべきところで決めて、防ぐべきところを防げば、たらればにはなりますが我々が4位以内のポジションを確保できたのではないかと思います。そこに到達できなかったのは私の能力不足、経験不足だったと言わざるを得ません。

 

 

VTM:山本監督体勢になって組織的な攻撃・守備については課題を感じる部分があった反面、リーグ終盤に向けて尻上がりに選手たちが個々の持ち味を発揮して調子を上げていったように感じました。そういった個の能力や選手の持ち味を引き出すために努めたことは何かありますか?

山本監督:このJFLでやれる選手の技術水準というのは、これをやりなさい、あれをやりなさいと指示すればできるレベルにあります。それを個の力、あるいはグループ戦術になった時に瞬時にどのように発揮できるのかが重要です。それを発揮するためには意思表示・コミュニケーションが大切だと思いますので、選手同士が意思表示をはっきりすること。ここにパスが欲しいという意思だったり、今の場面はこうするべきだという表現だったり、それを徹底させるようにしました。また、選手の調子の振れ幅には大きい小さいがあるもので、特に調子の波が大きい選手については褒めて褒めて、少々のミスには目をつむってでも褒めて。山本五十六さんの指導法のように、どの組織でも同じだと思いますが褒めて成長を促すことを意識しました。

そして一番はこの頼りない監督になって、頼る人がいなくなると自然現象で「俺たちがちゃんとしなければ」というチカラが出てくると思います。そこに和波がコーチとして入って選手の気持ちを引き出したり、ストレスをなくすように働きかけたり。練習も厳しくするだけではなく、メリハリに気をつけながら取り組みました。選手の表情や目の色をみながら直接声をかけたり、間接的に声をかけさせたり、みんなの前で褒めたり、時にはみんなの前で叱ったり。そういった精神的なところのコントロールを意識しました。

 

VTM:GMとして見ていたチームと監督として見るようになったチームと、一番変化を感じた部分はどこでしょうか?

山本監督:笑顔が増えました。お互いにコミュニケーションを取る中で一番それを感じます。

 

ヴィアティン三重キャプテン・塩谷仁選手試合後コメント

 

塩谷仁選手・試合総括:やはりウチのチャンスで決めきれなかった、チャンス時の精度・質を高める必要があると感じました。ただ、FC大阪さんがあの1本を決めてくるあたりは昇格がかかっているチームの強い気持ちがあのゴールを生んだのかなと思います。

インタビュアー:あと1試合残ってはいますが、今シーズンを振り返って塩谷選手ご自身にとってはどんなシーズンでしたか?

塩谷選手:今までのシーズンに比べて僕自身は点を取れなかった。点を取ってもチームを勝たせることができなかった試合があったので、それについては正直悔しいですけれど、これからの成長の伸びしろだと受け止めてやっていくしかないと思っています。最後のところに入り込むところまではできているので、更にもう一歩のところの質を上げて来年、あと1試合とチームを勝たせる選手を目指します。

インタビュアー:キャプテンとしてのシーズンはこれまでと何か違いましたか?

塩谷選手:今シーズンはいろんなことがありました。シーズン途中での監督交代もなかなか経験することはないと思いますし、Jリーグ昇格がかかったクラブでキャプテンを任されたわけですが、自分の力不足があったと感じています。ノガさん(野垣内選手)や坂井さんがサポートしてくれる中で自分が先頭に立ってやってきましたが…、本当に悔しいの一言です。

 

 

VTM:監督が代わり中盤戦〜終盤戦にかけていいプレーやいい試合が増えました。しかしながら惜しくも勝ちきれない、追いつけない試合が沢山ありました。ギリギリのところで勝ちきれるチームとは何が違うと感じていますか?

塩谷選手:個人的な意見ですが、気持ちには引力があるという言葉があるように「気持ち」が大事だと思っています。このチームで勝って昇格するんだという強い気持ち、このボールを相手のゴールに入れるという強い気持ち、そして絶対にゴールを決めさせないという強い気持ち。それをいわきFCとやったときに強く感じました。1点リードしていてボールがラインを割った時にどっちのボールかわからない中でいわきがすぐにリスタートしてゴールを決められました(その時ヴィアティンの選手たちはどちらのボールなのかの判定に気を取られて止まってしまった)。あの時に勝つチームのしたたかさを感じましたし、勝つチームのゲームの作り方が僕らには足らなかったように感じています。

 

記者:いま言われたような足らなかった部分を今後はキャプテンとしてはどのように伸ばしていこうと思いますか?

塩谷選手:シーズンが変われば選手はどうしても入れ替わるので、今いる選手、来年もいる選手が必ず伝えていく必要があります。去年も悔しい思いをして今年もこういう結果になった。サポーターのみんなも期待してくださっている中で昇格を実現できなかった。その悔しさや課題を伝え、ベクトルを合わせていくことが大切だと思います。

 

 

インタビュアー:最後にサポーターのみなさんにメッセージをお願いします。

塩谷選手:たくさんの拍手や心の声は僕たちにしっかりと届いています。勝つことはできなかったですが、僕たちがピッチで全力で闘えるのはみなさんの後押しがあるからです。僕たちは日々努力してヴィアティン三重というクラブを昇格に導きますので、サポーター、スポンサー、地域のみなさん、クラブのスタッフ、支えてくださるみなさんと一緒に全員で昇格を実現したいと思っていますので、またこれからもヴィアティン三重をよろしくお願いします。

 

FC大阪・塚原監督 試合後コメント

 

FC大阪・塚原監督:まず感じたことは、バスを降りた瞬間からすごく良い雰囲気だと感じました。ヴィアティンさんのサポーターの雰囲気、会場の雰囲気がすごく良かったので「良いゲームになるだろうな」と最初に感じました。その中でも僕たちは少ないながらも昇格の可能性がありましたので「絶対に勝つ」というのが最低条件でした。勝つことが最低条件であり、その中でも複数得点での勝利をイメージしていました。苦しいなかでも先制することができたので良い流れが来ると思っていたのですが、後半は選手の疲労もあったり、ヴィアティンさんの気持ちのこもったプレー、サポーターさんの雰囲気もあり、気持ちと気持ちのぶつかり合いになり痛み分けという結果になったのだと思います。

ただ選手に伝えたのはしっかりとファイトしましたし、下を向く必要はないと。昇格の可能性は無くなったとしても今日のゲームは誇れるものだと思うので、全力を発揮して良い闘いができたと思います。試合後に山本監督と少しお話しましたが、お互いに良いゲームができましたねと言葉を交わしました。結果としては勝点3が欲しかったので悔しいですが、選手たちとともに誇りを持って帰りたいと思います。

 

 

インタビュアー:試合をする中で特に手強かった、苦戦した選手はいましたか?

塚原監督:ウチを分析する際に激しくプレッシングに来ると予想されていたと思います。それに対して相手はワンタッチではがしてくるという場面が多かったので、それに関してはかなり苦しめられました。その中でも特に質が高いのは5番の菅野選手。相手からすれば嫌だったと思いますが、菅野選手にはかなり激しく行くように伝えていました。

インタビュアー:そういう準備してきた部分も含めて、出し切れた試合だったということでしょうか?

塚原監督:そうですね。追加点を取れたらという思いはありますが、これはシーズンを通しての課題ですので、今日だけではなくそういった課題が出たゲームだったと思います。

 

記者:今日の試合、ヴェルスパ大分が勝ったことで昇格の可能性がなくなりました。残りの試合はどういったモチベーションで臨みますか?

塚原監督:昇格に向けてというのは本当に熱く、強いモチベーションになるとは思います。しかしそれがなくなったからと言って練習をぬるくやるのかと言えばそうではない。今の選手たちは悔しい気持ちが先行してネガティブな発想や言葉があるかもしれませんが、週明けには大阪らしくポジティブにグラウンドに集まってくれると思います。そして残り2試合はホームゲームですので、サポーターやスポンサー、今回連れてこられなかった選手のためにももう一回全力でやって勝ちに行くことが大切だと思います。ラスト1戦はいわきFCですし、そこで負けて優勝セレモニーは見たくないので僕たちが阻止できるように2連勝したいと思います。

サポーターのみなさんも昇格の少ない可能性を信じて後押ししてくれましたし、それがなくなったからと言って後押しを止めるようなサポーターではないと思います。ヴィアティンさんのサポーターを見ても分かる通り、昇格がなくなっても最後まで一緒に闘うのだろうと思います。ウチもそうありたいと思います。現場もしっかりやりますので最後まで応援よろしくお願いします。

 

前半・激しいプレスに手こずり早い時間に失点

 

第32節、昇格の可能性がすでに消滅したヴィアティン三重、そして昇格の可能性を残すFC大阪の対戦。両チームの平均身長はヴィアティン三重174.3cmに対しFC大阪177.3cm。圧倒的なフィジカルの強さを武器に前からの激しいプレスをかけるFC大阪、立ち上がりからその圧力とスピードに手を焼くヴィアティン三重。前節の鈴鹿戦と同様に立ち上がりは横パスが多く前にボールを運べない。

お互いに攻守の切り替えが速く、目まぐるしく試合が展開する。しっかりと統率されコンパクトな陣形から爆発的なプレッシングでボールを奪取するFC大阪。それをかわすべくワンタッチプレーでテンポ良くボールをつなごうとするヴィアティン三重。ともに何度かのチャンスをものにできず迎えた25分、エリア内でクリアしたボールが走り込んだフリーの相手の前に転がりミドルシュート。難しいバウンドになったボールは思っていたより跳ねたのかGK①森建太の手を弾いてゴール。前節の鈴鹿戦での失点を思い出すようなシュートシーンだった。明らかなミスはなかったが、寄せきれずにシュートを打たせてしまったことが悔やまれる。

 

 

失点はしたものの、フィジカルで勝る相手に一歩もひるまずに集中力の高い守備を見せる④寺田、②大竹。大阪㊴ルイス・フェルナンド選手は身長188cm、後半に交代で退くまで④寺田が完全に抑えてほとんど仕事をさせなかった。

 

 

怪我で⑱佐藤洸一、⑨酒井達磨を欠くヴィアティン三重は若手の㉓小塚をスタメン起用。FC大阪の大型CBの二人を相手に良い動きを見せるがオフサイドになる場面も多くチャンスを作れない。

 

 

 

後半・互いに譲らない展開、88分にミスを突いて坂井が決める

前半に失点はしたもののどちらも譲らない展開、圧力は大阪が勝り、ボール運びではヴィアティンが勝る。後半に入ってギアを上げてきたヴィアティン三重。セカンドボールを積極的に拾い、球際で気迫と執念を見せて相手を上回りじわじわと保持率を高めていく。前半途中から入った⑧澤のところにボールが入るとテンポに変化が出て、相手の予測を上回り前にボールを運ぶ場面が増える。

 

 

しかし相手のプレスも衰えず、甘いパスは途中で引っ掛けられそこから一気にカウンターに遭う。しかしボールを奪われた後は素速い戻りでピンチを防ぎ、それぞれに責任感の強いプレーが見られる。奪われたら戻り、戻れなければ仲間が全力でカバーする。ベテランも若手も助け合う。

 

 

互いに何度かのチャンスを決められずに迎えた84分フリーキックのチャンス。キッカーは⑯橋本、柔らかく弧を描いたボールは走り込んで高く跳んだ⑦塩谷の頭にピタリ。GKの上を越すかに思われたシュートを相手GKがギリギリ掻き出しゴールならず。

 

 

 

そしてこのまま1点差で終わるかと思われた88分、ピッチ中央付近から⑧澤が前線にロングボールを供給、少し長くなり相手GKが前にでて裁こうとしたがミス、そこに走り込んでいた⑥坂井の前にボールが転がった。相手DFがひとりついてきていたが坂井が落ち着いてゴールに流し込んで同点!後半途中から入ったベテラン⑥坂井がアサスタに詰めかけたおよそ1,500人の期待に応えた。

 

 

最後まで諦めない両チーム、アディショナルタイム90+5分にFC大阪がヴィアティン三重ゴールに畳み掛けたが意地で跳ね返しピンチを凌ぐ、そしてタイムアップ。90分間に渡って緊張感みなぎる激闘は1-1のドローで終わった。

なんとしても勝点3を上げて昇格に望みを繋げたかったであろうFC大阪の選手たち。相当な悔しさがあったにも関わらずヴィアティン三重サポーターの方まで来て一礼。ホーム最終戦にふさわしい好ゲームとフェアプレーに対しヴィアティン三重サポーターから大きな拍手が送られた。

 

 

試合のあと、ホーム最終戦セレモニーや集合写真撮影が行われましたが、そのレポートとフォトギャラリーは明日公開予定です!お楽しみに。

公式記録