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監督インタビュー

  • 西山 芽衣 / NISHIYAMA MEI

    • 三重県四日市市出身。1991年8月12日生まれ。
      現役時代のポジションはサイドバック。
    • ■選手歴
      2007年~2010年
      藤枝順心高校
      2010年~2019年
      静岡産業大学磐田ボニータ(チャレンジリーグ・なでしこリーグ2部)
      2020年
      静岡SSUアスレジーナ(チャレンジリーグ)
      なでしこリーグ通算185試合出場 
    • ■指導歴
      2014年~2020年
      静岡産業大学女子サッカー部コーチ
      2021年~2024年
      公立中学校サッカー部監督
    • ■資格
      JFA公認B級ライセンス/JFA公認ユースB級ライセンス/
      スポーツコーチングリーダー
なでしこリーグでも豊富な経験をしてきた西山芽衣監督。女子サッカーへの想いや中学や高校年代の選手たちに、どのような指導をしていくのかを聞いた。
  • サッカーを始めたきっかけを教えてください。

    西山:16歳でサッカーを始めました。兄の影響で地元のサッカー少年団に入り、男子と一緒にやっていました。男子U18監督の佐藤洸一さんと同じチームで、私が1年生の時に洸一さんが6年生で、兄が洸一さんと一緒にやっていて、それを見ているうちに自然とサッカーをやるようになりました。中学生になって四日市の楠クラブ(四日市の女子クラブチーム)に入り、学校の部活でもサッカー部(男子と合同)に入りました。当時は女子のクラブチームが少なく、選択肢としては伊賀FCくノ一のサテライトか、楠クラブか、その2つしかなくて私は楠クラブに入団しました。

  • 当時の女子選手を取り巻く環境

    西山:その当時(2004年)は女子中学生がサッカーを続けるのにはあまり環境に恵まれておらず、一生懸命にやりたい人はクラブチームに入ったり、学校のサッカー部に入ったりしていましたが、中学から高校に進学するタイミングで辞めてしまう人も多かったです。

    県内には女子サッカー部がある中学校はありません。県外だと例えば静岡県の常葉橘中学や東海大翔陽中学、有名なところだと鹿児島の神村学園、東京の十文字中学などがあります。やはりサッカーが盛んな地域や人口が多い都市になります。

    高校進学のタイミングで三重県を出て静岡県の藤枝順新高校に進学しました。楠クラブから藤枝順心高校に進んだのは私が初めてで、そもそも楠クラブから県外へ進学したのは私の1学年上の先輩が初めてだったので、県外へ出ていくこと自体がまだ少ない時代でした。

    当時(2007年)、県内で女子サッカー部がある高校は四日市南高校、四日市西高校、津西高校、この3校だけで、高田高校、津田学園高校、三重高校もそのころはまだ女子サッカー部はありませんでした。全国大会での実績が豊富な強豪校で挑戦してみたいと考えると、県外に出るという選択肢でした。

    そして藤枝順新高校から同じ静岡県の静岡産業大学へ進学し、その大学のチームでありクラブチームとしても活動していた磐田ボニータというチームに入り、そこから静岡SSUボニータというチームに変わって、全国リーグのなでしこリーグでプレーしました。

  • 現役時代のポジションは?

    西山:現役時代にはゴールキーパー以外、公式戦でもすべてのポジションを経験しました。基本的にはサイドバック、ウイングバックです。

  • 三重県の女子サッカーを盛り上げたいという情熱

    西山:中学まで三重県で、高校から静岡県に出た私ですが、これまでずっとサッカーに関わらせてもらってきたので、もっともっと女子サッカーを盛り上げていきたいというのが一番の想いです。また、子どものころに楽しくて始めたサッカーを年齢、学年を重ねるにつれてプレーする場所がなくなっていって辞めてしまう、サッカーが大好きなのに辞めざるを得ない、諦めざるを得ない、そういう選手を無くしていきたいと思っています。プレーする場所や環境がないからサッカーを辞めて違うスポーツを選んでしまうというのは淋しいですね。

  • 三重県の女子サッカーを取り巻く環境

    西山:今は三重県出身のWEリーグ選手もいますし、なでしこリーグの選手、なでしこリーグ経験者もたくさんいますが、県内の環境はまだまだ足りていません。私が過ごした静岡県はサッカー王国ということもあり、三重県よりかなり整っています。それは選手としての環境も、指導者としてサッカーに関わる環境もです。やはりサッカー人口が圧倒的に多いので、静岡県は女子も男子と同様に小学生年代から各年代、全カテゴリーで西部・中西部・中東部・東部と4つの地域に分かれて活動しています。その4ブロックすべてに地域リーグが行われていて、各ブロックにそれぞれ10チームぐらいずつが参加しています。従って、その地域リーグだけでも年間10数試合の公式戦が確保されている状況です。

    さらにそこからレベルに応じて静岡県リーグ2部に行くチームがあり、1部リーグ、東海リーグというピラミッドを登っていく形です。一方、三重県はブロック分けもないので地域リーグはなく、県リーグだけしかありません。その参加チームも少ない状況です。※2024年度の女子三重県リーグの参加チームは3チームのみ。他にU18リーグ(3チーム)、U15リーグ(4チーム)が開催されている。

  • もったいない三重県の現状

    西山:ヴィアティン三重レディースのユースは2019年から活動を開始しています。活動開始からすでに5年以上経っているのですが、まだまだ地域の皆さんにチームの存在を知って頂いていないので、これから本格的に組織としても活動内容も強化していきたいと考えています。

    というのも、三重県にはなでしこリーグのチームが2チームあります。今は1部と2部でカテゴリーは違いますが、伊賀FCくノ一さんと私たちヴィアティン三重レディースです。先ほどから話している静岡県には1チームしかなく、愛知県にも1チームしかない、でも三重県には2チームある。にも関わらず育成カテゴリーは静岡や愛知に比べてまだまだ十分では無いと思います。現役時代を静岡で過ごしていろんな経験をさせてもらう中で、女子サッカーだけじゃなく、サッカー全体を外で見させてもらって、三重県との様々な違いを感じました。

    ヴィアティン三重レディースに関しては、なでしこリーグ2部でトップチームが所属しているので、能力が高ければ中学生、高校生でもトップチームの試合に出るチャンスが有るのに、それをやれていないのがとてももったいないと感じています。三重県にもそういう高い能力を持った選手が必ずいるはずです。いま現在はそういった選手のほとんどは県外に出ていってしまっているので、三重県にいてもトップチーム、トップリーグを目指すことができるんだよということを示していきたいと思っています。

  • なでしこジャパンも夢じゃない、将来の可能性

    西山:なでしこリーグもWEリーグも、中学生でも出場できます。なでしこリーグ2部に所属しているJFAアカデミー福島は中学生と高校生のチームですし、WEリーグの日テレ・ベレーザでは中学生選手が試合に出たこともあります。ですので、ヴィアティン三重レディースでもその可能性があります。もちろんそれ相応の実力がある上での話で簡単なことではないと思いますが、場合によっては中学生・高校生のうちにトップチームでなでしこリーグを経験してもらって、高校卒業のタイミングにはWEリーグのチームから声を掛けてもらえるようなことがあれば、その選手も、ヴィアティン三重の育成組織としても幸せなことです。

    将来的にはヴィアティン三重レディースが着実にステップアップしていってWEリーグに参入することができるのが一番良いですが、現在はなでしこリーグ2部なので、そこで活躍した選手がWEリーグに行って、さらにはなでしこジャパンで活躍してくれるようになったら嬉しいですね。

    男子でもJ1の最年少出場記録は15歳ですが、そういう点では男子に比べて女子のほうが若いうちからトップカテゴリーでプレーをするチャンスは多いかもしれません。身体的にも中学3年生にもなれば大人と変らないぐらい成長している選手もいますし。

  • 2025年現在のユース活動について

    西山:現在は人数が少なく、所属選手が7名(全員中学生)なので公式戦には出られていません。人数は足りていませんが、試合経験をたくさん積んで欲しいので、年間通して少しでも多く練習試合を組んだり、公式戦の大会にはオープン参加で出場させてもらっています。今シーズン、私が着任してからは可能な限り毎週末に試合の予定を組んでいます。

    人数が足らない部分は対戦相手の選手をお借りしたり、私の現役時代の後輩たちに助っ人をお願いして参加してもらったりしています。でも助っ人として来てくれる後輩たちはなでしこリーグを経験した選手たちばかりなので、一緒にプレーする選手たちにはとても良い刺激になっているようです。私が監督として外から指示を送るだけじゃなく、実際にピッチの中で「今のはこうするといいよ」といったようにその場で指導やアドバイスをもらえるので、ある意味ではとてもいい環境だと思います。人数が足らない今しかできない利点ではあると思います。もちろん選手が11人、サブも含めてもっといて、試合の中で自分たちで気づくことができるのが一番良いのですが、今は選手が足らないのでそこをポジティブに捉えてやっています。

  • いま所属している7名の入団経緯は?

    西山:主に桑名市を中心とした北勢エリアに住んでいる子たちです。もともと小学生のころにヴィアティンのスクールに通っていた子、あとは先輩がヴィアティンに入ったからその先輩を追って入った子たちです。

  • 県内のU15年代の公式戦・大会は?

    西山:県内のU15リーグがあります。それとU15年代の選手権というのがあって、冬に全国大会、秋に地域予選が行われています。U15年代でいうとその2つが大きな公式戦です。そして三重県リーグで優勝すると東海U15リーグに参入するための入れ替え戦に進みます。そこで勝ち進めば東海U15リーグに参加することになります。ヴィアティン三重としては、東海U15リーグに参入することを目標にしています。

    東海リーグは8チームが参加していて、静岡から4チーム、愛知から4チーム、三重と岐阜は参入できていません。ですので東海リーグは静岡と愛知の2強になっていて、リーグもそうですが秋の選手権でも東海ブロック大会は静岡と愛知が勝ち進み、三重と岐阜は勝ち進むことができていません。

  • 中学から県外に出る選手もいるのでしょうか?

    西山:桑名や北勢地区の子だと、愛知県のクラブチームに通っている選手が多くいます。三重県トレセンには来ていますが所属は愛知県のクラブチームという選手が10数人いると思います。そういった選手たちは三重県のクラブチームに所属するより、愛知のチームの方が全国大会に出られる確率が高いので、実力がある選手たちが愛知を選ぶのは現状では仕方ないことかなと思っています。東海U15リーグに所属している愛知県のクラブチームに行けば、三重県リーグはもちろん、愛知県リーグよりもレベルが高い東海リーグで静岡のチームと試合をしているので、より高いレベルで実力が拮抗した相手と強度の高い試合を経験していると思います。そこに食い込んでいけるチームになるようヴィアティン三重を作り上げていきます。

  • チームとしての今後の目標について

    西山:まずはチームの人数を増やします。これは来年すぐにやります。そして東海リーグ参入を目指します。これは将来ということではなくて直近、もう数年内に達成することを考えています。来シーズンは県リーグを闘い、再来年には東海リーグ参入の可能性が出てくるので、長い道のりだとは考えていません。ですので、来春に入団してくれる新1年生は1年目に県リーグを闘い、その翌年、2年生の年には東海リーグ参入の可能性もあると思います。そこを目指していきます。

  • どんな選手を育てていきますか?クラブとしての強みも聞かせてください。

    西山:いろんな状況の中で、自分の考え、判断で選択できる選手になって欲しいと思っています。対戦相手があることなので、相手ごとにその時の判断・答えは違うと思いますが、そこでこういう相手にはこういうプレーを選択すれば良いというのを、自らが考えて選択できる。そんな選手を育てていきます。そうすればこの先どこに行っても通用するプレーヤーになれると思っています。主体的に動ける選手。それはピッチ内はもちろんピッチ外においてもそうです。そういう主体性のある選手を育成したいと考えています。

    強みとしては、クラブが指定管理者として運営している東員町のスタジアム(LA・PITA東員スタジアム)も含めて、練習場を持っているのは大きなポイントです。練習場所がなくて困るということがありません。

  • 練習スケジュールについて

    西山:平日は月曜日と木曜日の夜19時から20時半まで、桑名市和泉にあるクラブ事務所横のヴィアティングラウンドで練習しています。人数が増えてくれば東員町の多目的グラウンドなどで行うことも検討しています。週末は練習試合を入れたり公式戦(オープン参加)が入ってきます。現時点では平日週2回の練習ですが、人数が増えてチームが活性化してきたらもう少し増やして行こうと考えています。中学生年代の場合、週2回の練習が極端に少ないとは思っていません。高校生になればもう1日増やした方が良いと思いますが、これは私の個人的な考えですが中学生の間は週2回の練習をしっかりやって、学校で部活動や違うスポーツでもいいので身体を動かしてもらえば良いのではないかと思います。

  • トップチームとの交流は?

    西山:トップチームがシーズン中は一緒に練習するというのはありませんが、なでしこリーグのホームゲーム運営のお手伝いをさせてもらって、トップチームの試合を一番近いところで見て、感じてもらっています。実際に見て「カッコいいな!」と感じることは何よりも強いモチベーションになると思っているので、自分もこうなりたい!という気持ちやなでしこリーグのプレーを身近に感じてもらえたらと思っています。

  • 進学のときには相談に乗ってもらえますか?

    西山:はい、もちろんです。長くサッカーには関わらせてもらっているので、選手時代にお世話になった指導者さんや、県内・県外の高校、指導者講習会などで知りあった指導者同士のつながりもたくさんあります。私は高校から県外に出て大学に進学し、なでしこリーグでプレーしてきたので、そういった経験を元にしたアドバイスもできると思っています。

  • 最後にお聞きします、西山監督はどんなタイプの指導者ですか?

    西山:情熱です!私が選手時代に指導していただいた方たちが情熱的でとても素晴らしい人に恵まれたので、私も情熱を持って選手たちに向き合いたいと思います。

    とにかく今はヴィアティン三重レディースU15としての存在・活動が認知されていないのと、知っていても練習や試合の活動が少ないと思われる方が多くて、他のクラブを選ばれるケースが多いので、今季から私が専任の指導者として関わらせてもらうことになって、練習も試合も他クラブと遜色がないぐらいチーム活動があるというのを多くの人に知って頂きたいです。

    練習参加も随時受け入れていますので、少しでも興味を持っていただくことができたらぜひ気軽に来てもらえたら嬉しいです。桑名地区の人たちでもヴィアティン三重のことはもちろん知っているのに、女子のアカデミーのことを知らない人がたくさんいますし、中学生年代女子のクラブチームがあるということを知らない、あると思っていない親御さんたちが多いので、とにかく周知活動に力を入れています。

    これからは学校の部活動も仕組みが変わっていくので、女子でサッカーを続けたい選手をどんどん受け入れられるような強いクラブ・組織にしていきます。

PARTNER

  • ミライリスホールディングス